大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(う)171号 判決

被告人 佐野多吉

〔抄 録〕

次に職権を以て記録を調査するに、検察官は被告人に対し、昭和三四年八月一八日公訴を提起し、二回の職業安定法第三二条第一項違反(有料職業紹介)、労働基準法第六条違反の訴因を公訴事実として掲記し、昭和三四年八月三一日公訴を提起し二一回の職業安法第三二条第一項違反(有料職業紹介)、労働基準法第六条違反の訴因を掲記し、次いで昭和三四年一二月一七日第二回公判に於て右職業安定法違反、労働基準法違反事件は包括一罪である旨主張し、昭和三四年一〇月二七日付訴因の追加請求書どおり一八回の職業安定法第三二条第一項違反(有料職業紹介)、労働基準法第六条違反の訴因及び一二回の職業安定法第三三条第一項違反(無料職業紹介)の訴因を追加し、右昭和三四年八月三一日附起訴状による公訴の棄却を求めた。而して原判決は右検察官の請求を容れて該公訴を棄却したが、公訴にかかる他の横領の事実とともに、昭和三四年八月一八日附起訴状記載の二回の有料職業紹介等の訴因及び昭和三四年一〇月二七日付訴因追加請求書記載の一八回の有料職業紹介等の訴因、一二回の無料職業紹介の訴因につき有罪の言渡をした。

案ずるに、有料職業紹介の所為と無料職業紹介の所為とは基本的事実関係を異にする各別個の事実である。ところで、原判決は検察官の公訴棄却の請求を容れて、昭和三四年八月三一日付起訴状による公訴を棄却したのであるから、該起訴状に記載された無料職業紹介の事実を審判の対象としなかつたわけである。然りとするならば、昭和三四年一〇月二七日付訴因追加請求書に記載する無料職業紹介の事実についても、これと同様の措置に出でなければならない筋合であつた。けだし、訴因追加請求は、前に起訴された訴因と公訴事実の同一性を害しない限度において更に訴因を追加することの請求であつて、前の起訴と別個の新たな起訴ではないからである。しかるに、原判決は、事茲に出でず、右訴因追加請求書に記載された無料職業紹介の事実を罪となるべき事実の一の(ロ)として認定し、これにつき有罪の判決を下した。原判決のこの措置たるや、まさに、刑訴法第三七八条第三号にいう、審判の請求を受けない事件について判決をした場合に該当するものというべきであつて、違法たるを免れない。従つて、原判決はこの点において破棄されなければならない。

(尾後貫 鈴木 飯守)

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